「ASD 向いてる仕事」で検索すると、職業を並べたリストがいくつも出てきます。事務、プログラマー、検査、工場のライン。書いてある内容はサイトごとに違いますし、根拠が示されていることはほとんどありません。

先に、この記事でできないことを書きます。診断名から向いている仕事を割り出す方法は、公的にはどこにも用意されていません。自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群、ASD。呼び方はいくつもありますが、どの呼び方であっても、診断名と職業を結びつける根拠のある表がある、という状態にはなっていません。ですので、この記事でも書きません。

代わりに用意されているものがあります。実際に働いてみる前に、働き方の条件を試して確かめるための場所です。しかも公的な機関の側に、法律と要綱にもとづいて置かれています。厚生労働省が出しているハローワークの案内には、応じている相談の例として「どのような仕事が向いているかわからない。」という一文がそのまま載っています。答えを持っている記事を探すより、その相談を持ち込める場所を知っておくほうが早いです。

この記事では、その場所を4つ並べます。それぞれについて、何をしてくれるところなのか、診断や手帳が要るのか、費用はかかるのかを、一次資料で確認して書き分けました。あわせて、制度が診断名では動かないという前提と、実際に働いている発達障害のある人の賃金や労働時間も、調査の数字で見ておきます。

制度は診断名では動きません

最初にここを押さえておくと、以降の話が整理しやすくなります。

発達障害者支援法の定義

発達障害者支援法第2条第1項は、この法律でいう「発達障害」を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定めています。

続く第2項が「発達障害者」を定めていて、こちらのほうが実務では効いてきます。発達障害者とは、発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものです。診断があることだけでなく、生活のうえで制限を受けているかどうかが定義に組み込まれています。そして第3項は「社会的障壁」を、日常生活または社会生活を営むうえで障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものと定めています。困りごとの原因を本人の側だけに置いていない書き方です。

この法律の第10条は「就労の支援」という条文で、国と都道府県に対して、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどとの連携を確保しながら、就労の機会の確保と定着のための支援に努めなければならないと定めています。後で出てくる機関の名前が、法律の条文にそのまま並んでいます。

障害者雇用促進法の「障害者」には発達障害が書き込まれています

働く場面のほうの根拠法は障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)です。第2条第1号の「障害者」の定義は次のとおりです。

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。第六号において同じ。)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者

かっこ書きで「発達障害を含む」と明記されています。そして、この定義に手帳は出てきません。あとで出てくるハローワークの案内文や地域障害者職業センターの根拠条文は、すべてこの第2条第1号の「障害者」を対象にしています。だから手帳がなくても使える、という関係です。

手帳が要るのは、企業の雇用率に数えられるとき

一方で、同じ法律のなかに手帳を条件にしている条文があります。第37条第2項です。ここでは雇用義務の対象となる「対象障害者」のうち精神障害者を、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限ると定めています。企業が「うちは法定雇用率を満たしています」と数えるとき、その1人に入るには手帳が要ります。障害者雇用枠の求人の多くが手帳を条件にしているのは、この構造が理由です。

発達障害を理由に精神障害者保健福祉手帳を申請することはできます。厚生労働省の精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準は、判定の材料となる精神疾患(機能障害)の状態を統合失調症、気分(感情)障害、非定型精神病、てんかん、中毒精神病、器質性精神障害、発達障害、その他の精神疾患に分けていて、発達障害がその一区分として立っています。実際、令和5年度障害者雇用実態調査で雇用されている発達障害者のうち、81.7%が精神障害者保健福祉手帳で確認されていました。手帳を取るかどうかの判断材料は障害者手帳のメリットとデメリットに、申請の手順は精神障害者保健福祉手帳の申請にまとめてあります。

整理すると、こうなります。

診断だけの場合 精神障害者保健福祉手帳がある場合
発達障害者支援センターへの相談 できます(診断がなくても相談できます) できます
ハローワークの専門援助部門 使えます 使えます
地域障害者職業センターの職業評価・職業準備支援 使えます 使えます
就労移行支援・就労継続支援 使えます(受給者証の手続きが要ります) 使えます
障害者トライアル雇用 対象になり得ます(窓口で確認) 対象になり得ます
障害者雇用枠の求人への応募 手帳を条件にしている求人が多数です 応募できます
企業の雇用率への算定 されません されます(等級の条件はありません)
税の障害者控除 対象外です 対象です

診断を受けただけでは、何かが自動的に始まるわけではありません。けれども、診断がなくても相談できる窓口はあります。ここを取り違えて、まず診断を取らないと何も始まらないと思い込んでしまう方がいます。順番はどちらからでも構いません。

どこに相談できるのか。4つの窓口の使い分け

働くことを相談できる公的な窓口

働き方を考えたい。どこに持ち込むか
発達障害者支援センター発達障害全般の相談。就労支援の担当職員が置かれています
ハローワークの専門援助部門求人の紹介と職業相談。手帳の有無は問いません
地域障害者職業センター職業評価と職業準備支援。利用は無料です
どれか一つを選ぶものではありません。三つとも無料で、他の機関へつなぐことも業務に含まれています。迷ったら、いちばん近い場所に電話をかけて構いません。

1. 発達障害者支援センター

発達障害者支援法第14条にもとづく機関です。都道府県知事が指定した社会福祉法人などが運営するか、都道府県が自ら行います。国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害者支援センター・一覧には、支所を含めて108か所が載っています(2026年8月現在)。

法律の第14条第1項が定めている業務は5つで、そのうち第2号が「発達障害者に対し、専門的な発達支援及び就労の支援を行うこと」です。就労支援がセンターの法律上の業務として書かれています。

もう少し具体的な中身は、厚生労働省の発達障害者支援センター運営事業の実施について(令和7年5月9日最終改正)という通知の実施要綱で決まっています。就労支援については、就労を希望する発達障害児(者)に対して就労に向けて必要な相談等による支援を行うとともに、必要に応じてハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの労働関係機関と連携した就労相談による支援を行うものとする、と書かれています。職員の配置の項では、相談支援を担当する職員、発達支援を担当する職員と並んで、就労支援を担当する職員を常勤で置くことが定められています。

利用の対象について、要綱は次のように書いています。センターが行う事業の利用対象者は発達障害児(者)やその家族等とする。ただし、早期支援のためにセンターへの相談が必要で、発達障害の特性を有すると思料される場合の利用を妨げるものではない。診断を受けていない段階でも相談を断らない、という趣旨です。費用については、要綱に利用者から料金を取るという定めがなく、センターの行う事業に要する費用は都道府県または指定都市が支弁するものとされています。

ただし、注意書きも公式に出ています。センターの一覧のページには、人口規模、面積、交通アクセス、既存の地域資源の有無や自治体内の支援体制の整備状況などによってセンターの事業内容は異なるため、初めて利用する方はまず住んでいる地域を担当しているセンターに問い合わせてほしい、と書かれています。この分野は、住んでいる場所で受けられる中身が変わります。予約が数週間先になる地域もあります。

なお、厚生労働省と文部科学省の協力のもとで国立障害者リハビリテーションセンターと国立特別支援教育総合研究所が共同運用している発達障害ナビポータルには、働くことに関する情報がまとまった区画があります。窓口に電話をかける前に、何が用意されているのかをひととおり見ておく先として使えます。

2. ハローワークの専門援助部門

求人の紹介そのものを扱うのはハローワークです。障害のある方の相談を担当する窓口は、所によって専門援助部門、専門援助コーナー、障害者専門窓口などと呼び名が違いますが、役割は同じです。

ハローワークインターネットサービスの障害のある皆様へには、こう書かれています。専門的な支援の対象者は、障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な方です。障害者手帳をお持ちでない方も利用できますので、ぜひご利用ください。前半の文言は、先に見た障害者雇用促進法第2条第1号の定義とほぼ同じです。

厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークが出している障害のある求職者のみなさまへというリーフレットには、対象として身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、高次脳機能障害、難病などが例示され、「手帳の有無は問いません」と書かれています。応じている相談の例として並んでいるのは次のような内容です。

  • 仕事をしたいが、不安がある
  • どのような仕事が向いているかわからない
  • 採用面接で、自分のことをうまく説明する自信がない
  • 就職しても長続きしないのではないか、心配

2番目が、まさにこの記事を探して読んでいる方の言葉だと思います。同じリーフレットには、職業能力や仕事の適性などを把握するため、必要に応じて地域障害者職業センターによる職業評価(無料)を案内する、と書かれています。ハローワークは、次に説明する職業評価への入口でもあります。

費用はかかりません。職業安定法第8条が「公共職業安定所は、職業紹介、職業指導、雇用保険その他この法律の目的を達成するために必要な業務を行い、無料で公共に奉仕する機関とする」と定めています。ただし、相談の内容によっては主治医の診断書や意見書(ハローワークの書式)の提出をお願いする場合がある、とも書かれています。障害者雇用枠の求人を実際にどう探すかは障害者雇用の求人はどこで探すのかにまとめています。

3. 地域障害者職業センター

ここがこの記事の中心です。全国47都道府県に置かれていて、高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営しています。根拠は障害者雇用促進法第19条と第22条です。第22条第1号は、地域障害者職業センターの業務として「障害者に対する職業評価、職業指導、職業準備訓練及び職業講習を行うこと」を定めています。ここでいう障害者は第2条第1号の障害者ですから、手帳の有無は条文上の条件になっていません。

同機構の地域障害者職業センターのご案内というリーフレット(精神障害のある方・発達障害のある方に向けた支援内容のご紹介として案内されているものです)には、利用について次の3点が明記されています。

  • ご利用はすべて無料です(交通費、食費などは除く)
  • ただし、工賃などの支給はありません
  • 障害者手帳を交付されていない方もご利用できます

サービスは大きく3つに分かれます。

職業評価は、就職の希望などを把握したうえで職業能力等を評価し、職場に適応するために必要な支援内容・方法を含む職業リハビリテーション計画を作るものです。リーフレットでは、把握・整理する内容として、職業適性(得意・不得意など)、作業遂行力(注意力、集中力など)、性格・思考の特徴、働くことへの興味・関心、医療情報(服薬状況、不調のサインなど)、理解力・記憶力などが挙げられています。診断名からではなく、実際にやってみた結果から整理していくという手順です。

職業準備支援は、JEEDの案内によれば、就職または職場適応に必要な職業上の課題の把握とその改善を図るための支援、職業に関する知識の習得のための支援、社会生活技能等の向上を図るための支援を行うものです。ひとりひとりの状況に応じてメニューを組み合わせた個別カリキュラムを作る形で、期間は原則12週間です。リーフレットに載っているカリキュラムの例には、ストレス対処、アンガーコントロール、職場対人技能、障害の開示・非開示について、面接の受け方、事業所で配慮を得たい内容の整理といった講座が並んでいます。あわせて事務作業などの作業体験があり、その狙いとして「自分に合った働き方や仕事の検討」が挙げられています。記事で決めるのではなく、ここで実際に手を動かして考える、という設計です。

ジョブコーチ支援は、就職先の職場にジョブコーチが出向いて、職務の内容や人間関係を踏まえた相談に乗り、事業所との調整を行うものです。支援期間は原則1か月から8か月の間で設定し、標準は2か月から4か月です。雇用前でも雇用時でも雇用後でも利用できると書かれています。

リーフレットには結果の数字も載っています。令和5年度の職業準備支援の利用者のうち就職された方の割合は73.9%、ジョブコーチ支援については支援期間を終了してから半年後に働き続けている方の割合が89.2%でした。参考値として、就労移行支援事業所利用者の一般就労への移行率(令和4年度)57.2%が並記されています。これらは利用した方の結果であって、利用すれば必ずそうなるという意味の数字ではありません。それでも、試せる場が用意されていて、そこを通った人の一定数が働き始めているという事実の目安にはなります。

利用にあたっては、あらかじめ電話かFAXで連絡してほしいとJEEDの案内に書かれています。ハローワークから案内されて申し込む流れが一般的です。地域障害者職業センター所在地一覧で最寄りの場所が調べられます。

4. 障害者就業・生活支援センター

仕事の話と暮らしの話を切り離さずに持ち込める場所です。厚生労働省の障害者就業・生活支援センターについてによると、令和8年4月1日時点で全国に340か所設置されています。就業面と生活面の支援を一体的に行うところで、生活習慣や健康管理、金銭管理といった相談にも応じます。ハローワークのリーフレットにも、生活面を含む幅広い支援を希望する方にはここを案内すると書かれています。

このほか、就職に向けた訓練を通いながら受ける場としては就労移行支援があります。手帳がなくても利用できますが、市区町村の受給者証の手続きが必要で、原則2年という期間の定めもあります。中身は就労移行支援とは何かにまとめました。雇用契約を結んで働くA型、雇用契約を結ばずに通うB型については就労継続支援A型とはと就労継続支援B型はどんな人が使えるかを見てください。令和7年10月1日からは就労選択支援というサービスも始まっていて、短期間の生産活動などを通じて就労に関する適性や能力を評価し、本人の意向や必要な配慮を整理する仕組みになっています。

実際に働いてみてから決める方法もあります

準備の場だけでなく、雇用契約を結んだうえで期間を区切って試す仕組みも用意されています。障害者トライアル雇用です。

厚生労働省の障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースのページによれば、目的は「一定期間雇用することにより、その適性や業務遂行可能性を見極め、求職者及び求人者の相互理解を促進すること等を通じて、障害者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ること」です。適性を見極めるという言葉が、制度の目的そのものに書かれています。

仕組みは求職者向けの「障害者トライアル雇用」のご案内に整理されています。ハローワークで障害者トライアル雇用求人に応募し、採用が決まればおよそ3か月から6か月の有期雇用契約を結びます。期間が終わったところで、改めて継続雇用の契約を結ぶ流れです。応募にあたっては書類選考ではなく、必ず面接を受けることができますと明記されています。

対象になるのは、障害者雇用促進法第2条第1号の障害者であって、次のいずれかに当たる方です。

  1. 紹介日において、就労の経験のない職業に就くことを希望する方
  2. 紹介日前2年以内に、離職が2回以上または転職が2回以上ある方
  3. 紹介日前において離職している期間が6か月を超えている方
  4. 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者(この場合は1から3の要件を問いません)

手帳については、求職者向けリーフレットに「障害者手帳を所持していない場合でも、障害がある方であれば対象に含まれることがあります」と書かれています。実施要領(令和8年4月8日版)も、対象者を確認する書類として主治医の意見書や医師の診断書を挙げたうえで、「障害者手帳を所持していない発達障害者等を含む」と明記しています。自分が当てはまるかどうかはハローワークの窓口で確認してください、というのが公式の案内です。

週20時間以上の勤務が難しい場合に向けては、障害者短時間トライアルコースがあります。対象は精神障害者または発達障害者支援法第2条に規定する発達障害者で、週の所定労働時間を10時間以上20時間未満から始め、職場適応の状況や体調に応じて期間中に20時間以上を目指すものです。期間は3か月から12か月です。この場合の対象者確認書類には、精神障害者保健福祉手帳のほか、主治医の意見書やその他医師の診断書が挙げられています。

なお、これらの助成金を受け取るのは雇う側の事業主です。働く側が申請する制度ではありません。ただし、求人票に障害者トライアル雇用求人と書かれているかどうかは、応募する側にとっても意味のある情報です。試す期間が最初から織り込まれている求人だからです。

発達障害のある人が実際にどう働いているか

最後に、数字を見ておきます。5年ごとに行われる厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査(令和5年6月1日現在。賃金と労働時間は令和5年5月中の状況。常用労働者5人以上の民営事業所が対象)が最新です。

従業員規模5人以上の事業所に雇用されている発達障害者は9万1,000人と推計されています。前回の平成30年度調査では3万9,000人でしたから、5年で2倍を超えました。

発達障害者の1か月の平均賃金(令和5年5月)

週30時間以上で働いている人15万5千円
発達障害者の平均(短時間の人を含む)13万円
週20時間以上30時間未満の人10万7千円
週10時間以上20時間未満の人6万6千円
超過勤務手当を含む「きまって支給する給与」です。平均の13万円を単独で見ると実態を読み違えます。短時間で働いている人が38.7%いることが、平均を押し下げています。

平均賃金は13万円(超過勤務手当を除く所定内給与額は12万8千円)でした。ただしこの数字を単独で出すと誤解を招きます。週所定労働時間別の内訳は次のとおりです。

週所定労働時間 発達障害者に占める割合 1か月の平均賃金
通常(30時間以上) 60.7% 15万5千円
20時間以上30時間未満 30.0% 10万7千円
10時間以上20時間未満 4.8% 6万6千円
10時間未満 3.9% 2万1千円

賃金の支払形態は、月給制が52.3%、時給制が44.2%、日給制が1.1%、その他が2.3%でした。およそ半数が時給で働いています。時給制であれば、体調で休んだ月はそのまま収入が減ります。生活の組み立てを考えるときには、平均賃金の数字よりもこちらのほうが効いてくることがあります。

そのほかの数字も並べておきます。

  • 正社員は36.6%(前回は22.7%)
  • 平均勤続年数は5年1か月(前回は3年4か月)
  • 職業別ではサービスの職業が27.1%で最も多く、次いで事務的職業が22.7%、運搬・清掃・包装等の職業が12.5%
  • 精神障害者保健福祉手帳で確認されている人が81.7%、精神科医の診断により確認されている人が1.0%
  • 手帳の等級は3級が41.1%で最多
  • 最も多い疾病は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害」で69.1%

職業別の内訳を「向いている仕事」と読まないでください。これは実際に雇われている人がどの職業に何割いるかという結果であって、適性を示したものではありません。求人がどこに多いか、企業がどの業務を切り出しやすいか、という企業側の事情が大きく反映されます。実際、同じ調査で企業が挙げた課題の第1位は「会社内に適当な仕事があるか」で、発達障害者について76.9%でした。

勤続年数が3年4か月から5年1か月へ伸びていることは、注目していい変化だと思います。同じ調査で、企業が「障害者雇用を促進するために必要な施策」として最も多く挙げたのは「外部の支援機関の助言・援助などの支援」で62.5%でした。関係機関に期待する取組みの1位は「具体的な労働条件、職務内容、環境整備などが相談できる窓口の設置」で30.6%です。企業の側も、自分たちだけで抱えるのではなく支援機関に入ってほしいと答えています。この記事で並べた機関を使うことは、働く側の一方的なお願いではありません。

なお、採用後に配慮を求めることは、障害者雇用促進法第36条の2と第36条の3で事業主の義務として定められています。過重な負担にならない範囲という限界はありますが、個人的なお願いではなく手続きとして持ち込めます。その中身は障害者雇用とはで扱っています。

今日できること

ここまで読んで、結局どれから手をつければいいのかと思われたかもしれません。順番に決まりはありませんが、目安を書きます。

まだ働くところまで気持ちが向いていない、話を整理するところから始めたい場合は、発達障害者支援センターです。就労に限らず相談を受けている機関ですし、診断がない段階でも相談を断らないことが要綱に書かれています。

求人を見たい、応募の仕方から相談したい場合は、ハローワークの専門援助部門です。手帳の有無は問われません。ここから職業評価や職業訓練につないでもらえます。

自分に合う働き方を実際に試して確かめたい場合は、地域障害者職業センターです。職業評価と職業準備支援がそのための仕組みで、費用はかかりません。多くはハローワーク経由で申し込みますが、直接電話をかけて相談することもできます。

どれも電話1本から始められて、名前を伝えずに一般的な質問として聞くこともできます。予約が先になることはありますが、待っている間に何かを失うわけでもありません。

最後にもう一度書きます。向いている仕事は、記事を読んで決まるものではありません。診断名を手がかりに適職を探そうとすると、根拠のない情報の中を延々と回り続けることになります。制度の側が用意しているのは答えではなく、確かめるための場所と時間です。職業評価も、職業準備支援も、トライアル雇用も、全部そのために作られています。今の時点で答えが出ていないことは、遅れではありません。

わたしたちは就労支援の現場で、適職の情報を集めるほど動けなくなっていく方を見かけます。読んで決めようとすると、自分に当てはまるという確信がどこまでも持てないからだと思います。短い実習でも、実際に試したことは読んだ情報より残ります。合うかどうかの答えがすぐに出なくても、確かめられた条件がひとつ増えていれば、それで前に進んでいます。